必ず目と耳の両方で確認します。だから常にあられと「会話」してるんですよね、焼きながら。
開発秘話というか、今までで苦労した点などはありますか?
同じ商品でも毎日焼き方が違うんですよね。だからずっと付きっきりで焼かないとダメなんです。
それは温度とか、環境による違いなんですか?
この地域特有の気候から、毎日の温度、湿度の変化、原材料の水分量まで色々な要素がありますし、それにガスの燃焼率も影響しますから、本当に毎日変化するものなんですよね。
時間を計ったり、温度計を見たり、水分計で生地の水分を計ったりしているわけですが、それはあくまでも大まかな目安となるデータでしかなく、常に微調整が必要です。
そういえば何度も火を調整していますよね。
ガスも空気と混ざり合って燃焼しますから、有る意味不安定なんですよね、特にプロパンガスの場合はね。
それに、商品によっても焼き方はそれぞれ違いますからね。パリッとした仕上がりのものと、サクッとした仕上がりのものとでは焼き方も違うわけです。
だいたい4つの段階で見ているんです。生地を投入したら余熱でまず暖めるんです。この段階で乾燥した生地が柔らかいお餅の状態に戻るんですね。そして次が「浮き」と呼んでますが、膨らませる段階ですね。ここで火力を少し上げるんです。そうすると焦げやすくなりますので回転も上げます。商品によって薄く焼きたい場合は、膨らんだ時に一旦出して風を当てて冷ますんですね。そして有る程度膨らんだら、今度は焼き色を付けます。ここでやっと「焼き」の段階です。最初から「焼き」ではないんですよ。そして最後の段階でも、火加減や回転を色々と変えながら仕上げる訳です。
かなり奥の深い作業なんですね。
そうですね、午前中と午後でも焼き方が変わりますからね。それに、商品によって膨らませ方にも変化を付けるために、焼き方だけではなく、餅の段階でも違うわけなんです。だからこそ杵突きにこだわっているわけです。
それで自動化も難しいということですね。
そうですね。だから逆にずるいことができないんですよ、例えば早く焼きたいとか、ごまかしができないんですよね。
素材が、こういう風に焼いてくれって言っているような感じなんですよね。だから時間がかかろうが、その焼き方で焼かないと。
だから、いつもそうやって、言葉は言わないですけども、焼きながら音を聞いているんです。火加減の調整も目で見てるだけじゃなくて、音で変えるんですよ。
なるほど、音を聞いているんですね。
最初の余熱の時にはカサカサ〜っていう感じの音なんですが、餅になって柔らかくなるから一旦音がなくなるんですよ。そして焼きの段階になると音がまた変わってきます。それで、最後焼けたらカラカラカラっていうような音になるんですよ。それで「あ、焼けたな」と。必ず目と耳の両方で確認します。だから常にあられと「会話」してるんですよね、焼きながら。
あられと会話ですか! それは機械ではできないことですね。
そうですね。ですから手作業にこだわっています。味付けの段階でも同じで、適当に回しているように見えますけど、やはり常に音を聞きながら、会話しながら仕上げるんですよ。 |